金魚の履歴書

観賞魚の原点・金魚の履歴書(生い立ち)について

金魚誕生の謎

「赤いベベ着たかわいい金魚…」と童謡にまで登場している、日本の伝統的な美しさを誇る金魚。観賞魚の中でも取り分け多くの人々に愛され、親しまれている金魚は、私たちの心に潤いを与えてくれ、生活に安らぎをもたらしてくれます。
そんな金魚は、今からおよそ1700年前に野生のフナの中から突然変異によって登場した、体色の赤いヒブナが祖先であると言われています。
その誕生には謎がいっぱいで、中国のとある湖で「火の如く赤い魚」が発見され、その事が幾つかの古い文献に記述され、それが金魚誕生の始まりであるとされています。
そして10〜12世紀の北宗時代には、中国杭州の西湖に金魚が確認され、湖畔の仏教寺院の池で飼育されて、やがて宮廷で観賞されるようになったようです。さらに、杭州城内に熱心に新種を作出する皇帝が現れ、次第に家臣たちのあいだに広まり、南宋時代には金魚の飼育や販売を業とする者が生まれたようです。
13〜16世紀になると、それまで池で飼育していた金魚を陶器製の水鉢で飼うようになり、明代には盆魚として水槽飼育が一般に普及し、中国の風物詩にもなっていきました。
以来、その後の突然変異や人為的な品種改良が繰り返されて、今日見られるような美しい特徴を持つ金魚が定着していきました。

日本への伝来

日本への伝来は、我が国最初の金魚の飼育手引書「金魚養玩草」(安達喜之著)によれば「文亀2年(1502年)1月20日、泉州左海の津(大阪堺の港)に渡り…」という記述から、今からおよそ500年前であると言われています。
当時の日本は室町中期で、まだまだ戦乱の世の中が続いていましたが、戦乱の時代である故に美への憧れも強め、静寂など「侘び(ワビ)・寂び(サビ)」といった心の安らぎを、美術工芸品や庭園、そして金魚にも求めていたのではないでしょうか。
しかしながら、当時の日本ではまだ金魚の養殖技術がなく、金魚は数年後には姿を消してしまったようです。その後、江戸幕府が誕生した元和年間(1615〜1623年)に再び中国から渡来してきたものが養殖され、今日の日本金魚の基礎品種になったものでないかとされています。

江戸時代の金魚ブーム

江戸時代前期の金魚は、富豪や大名などの一部の特権階級の高価な贅沢品の一つで、「西鶴置土産」(井原西鶴著)の中にも「大名の若子が金子五〜七両にて金魚を買い求め…」との記述があり、相当な贅沢品であったと思われます。
しかし、江戸幕府が安定した中期以降になると、太平の世が訪れ、江戸文化が花開くと同時に町に活気が出て来たのです。その一つに金魚文化があったのです。
当時は、数も少なく高価であった金魚を、如何に効率良く養殖するかが課題でしたが、太平の世の中になったが故に、仕事にあぶれた武士が副業として金魚養殖をやっていたと考えられます。というのも、金魚を愛玩魚として飼っていた大名などが、率先して金魚養殖を奨励して、家来に命じていたからです。また、ちょうどオランダ等からガラス(ギアマン)製造技術が輸入され、ビードロ等の吹きガラスが流行し、それが金魚鉢として利用されるようになったのです。さらに、当時のマスコミである浮世絵・浮世草子・川柳等で金魚が沢山登場しはじめ、江戸の町に一大金魚ブームが沸き起こったのです。
このように、養殖技術が確立して生産が可能になり、飼育するための器である金魚鉢が普及し、マスコミが大いに金魚を取り上げた影響で、金魚文化が一気に花開いたのです。

現代金魚の伝統と美

前述したように、金魚は人為的に作出された改良種であります。ですから、メダカやフナと違って、養殖されたものがすべて親と同じ魚になるとは限らないのです。それだけ品種を維持することは難しく、生産の手を抜くと品種が崩れ、美しい金魚が出来ないのです。もちろん、先祖返りとして、フナになってしまうこともあるのです。それだけ生産者の技術・選別眼が必要なのです。
現在日本で養殖されている品種数は約25品種と言われています。しかし、最近では新種も大変多く紹介されていますが、コンスタントに市場に流通されていないのが現状です。それだけ新種の作出が大変難しいと言うことです。
一概に金魚と言っても、これだけの歴史があり、伝統がある観賞魚なのです。

全世界で親しまれている金魚

チンユイ(中国語)、ゾロタヤ(ロシア語)、ペシュリーノ ロッソ(イタリア語)、ポワソン ルージュ(フランス語)、ゴールドフィッシュ(英語)等、金魚の呼び方は世界に普及しています。それだけ、世界の人々に愛され、親しまれている観賞魚の代表なのです。
日本でも、風鈴・うちわ・花火等と同じように、古くから夏の風物詩として定着しています。業界団体の調査によれば、日本の約500万世帯以上が金魚を飼育しています。
この数字は、他の観賞魚に比べ著しく高く、その生体としての強さ、手軽さ、可愛らしさ等から、誰にでも手軽に飼育しやすい観賞魚であるということの証明でもあります。

子供達の心の成長にプラスになる・金魚飼育

観賞魚としては1000年近い歴史があり、絶えず品種改良が繰り返されている金魚ですが、それだけ長い間人間と関わり合っていた観賞魚は、金魚を於いて他にありません。それだけ、その時代に合った愛され方をしており、現在では、社会環境の急激な変化に対応できるだけの安らぎや癒しを我々に与えてくれるのです。
特に、社会や家庭環境の変化等でストレスが溜まっていると言われている、成長期の子供たちにとって、学校や家庭での金魚飼育は、小さな命を大切にするといった情操教育にも大いに役立つのです。そうすることによって、健やかな心の成長を促す貴重な体験となるのです。
某観賞魚メーカーでは、1994年に日本医科大学心理学教室・杉浦京子助教授らと共同で「観賞魚飼育の精神療法における効用」に関する実験研究を行い、観賞魚を飼育することで活動性が高まり、意志が強くなることから、その結果としてストレス耐性が高まることが「学術的」な側面からも証明されています。
このように、私たちの生活や子供たちの成長に大変有効な金魚飼育を普及・啓蒙させることにより、観賞魚業界をより活性化させ、安定成長を促す原動力にもなるのです。
そのためには、是非とも生産者の方々に、丈夫で元気な金魚を作っていただき、流通業者の方々には、飼育管理を徹底させて病気に感染させないようお願いいたします。そして、より金魚人気が高まり、愛好家が沢山増え続け、金魚の魅力がより広く紹介されることを期待しています。
 

201306271